2008年07月16日

オチがありませんご注意願います。

本誌にハクロ将軍登場記念☆
でもオチがありません。何かもう書かなさそうなので冒頭だけアップ。ハクロ→ロイ→エドと言うか、ハクロ→ロイ×エド的な。あ、ギャグです念の為。激闘横恋慕なハクロ将軍が書きたかったんですな当時。

ご了承頂けた方のみ、続きからどうぞー。










「鋼の錬金術師殿―…ですね?」
 不意に周囲を軍人達に取り囲まれ、エドワードは油断なくその一人一人の顔を眺める。
 とりあえず知っている顔は無い。
「我々はニューオプティン支部のハクロ将軍の配下の者です。……是非、ご一緒に来て頂けないかと」
「ふぅん? ……それ、命令?」
 もし命令であればエドワードには従う義務があるが、後見人であるロイを通さずに他の将軍が命を下す事はまずあり得ない。
 そう踏んでの質問に、いいえ、とその軍人は首を横に振った。
「個人的にお会いしたいとの事です」
「あっそ。じゃあ、あいにく用事があるから。オレ」
 手をひらひらと振ってその場を立ち去ろうとしたエドワードに、軍人がお待ち下さい、と静かに声をかけた。
「―…ルビアの書」
 エドワードの足がぴたりと止まる。
「まさか……あるのか?」
 探し求めていた文献の名に、エドワードはその軍人に向き直る。
「私にはこれ以上の事は。ただ少なくとも、将軍がその事についての情報をお持ちである事は事実です。少なくとも―…損は無いかと」
 その言葉に、エドワードはニヤリと笑って言葉を返した。
「……で、どこに行けばいい?」




「大佐」
 どこかからの電話を受けていたらしいホークアイが、通話を終えてロイの傍らに立つ。
 書類仕事の合間に、ぼーっとペンをもてあそびながら、後見人を務めている金色の子供の事などを考えていたロイは、びくうと肩をふるわせた。
「なななな何かね中尉!別にさぼっていたわけではないぞ?!」
「エドワード君が今から来るそうです」
 三十路直前の国軍大佐としてどうかと思われる動揺ぶりをさらりと無視して、ホークアイは用件を告げた。
「―…は、鋼のが……?」
 とたんにロイの顔がぱあ、と明るくなる。滅多に会えない愛しい愛しい想い人の訪問予告となれば無理も無い。
 しかし、まるで乙女のように頬を染めるのは正直ちょっとかなり―…気味が悪い。
 その感情をかけらも表面に出す事無く、有能な副官は乙女モード全開の上官に告げた。
「あと一時間で駅に着くそうですので、それまでに本日のノルマをこなして下さい」
 さらりと告げるホークアイに、言われた当人よりも周囲がぎょっとする。
 何しろまだ午前中、業務は始まったばかりなのだ。本来なら夜までかかる仕事を一時間でこなすのは普通無理である。
「もしノルマが果たせたら、エドワード君とのティータイムが楽しめるようにセッティングして差し上げます」
「……どんとこい!」
 こぶしを堅く握りしめ、ロイは叫んだ。瞳の中でメラメラと焔が燃えている効果付きだ。
 それから尋常でない勢いで仕事を片付け始めた上官に、部下達は思わず生温い視線を向けた。
「大佐…そこまで大将の事好きなんだな……」
「いっそ哀れだな……」
「せめてエドワード君に伝わるといいんですけどね……」
「可能性としては限りなく低いですな……」
 ファルマンの言葉に、一同はうなずく。
 彼等の上官が、歩く豆台風こと鋼の錬金術師に懸想しているのは、東方司令部内では知らぬ者などいなかった。




 一体どこをどうやったのか、一日の仕事を一時間で終わらせ、ロイはにこにことエドワードと向き合っていた。
 帰って来い報告しに来いとしつこく言い聞かせても、数カ月顔を見せないエドワードが、きちんと訪問の予告を入れてまで会いに来たのだ。機嫌が良くならない方がおかしい。
「なー、大佐?」
 むぐむぐとケーキをほおばり、小首を傾げて呼びかけてくるエドワードに、内心『なんて愛らしいんだ鋼の!萌え!萌え!』などと思ってるのがだだもれの表情で、ロイが何かね?と問いかえす。
「オレ、大佐にお願いがあるんだけど、聞いてくれる?」
「お…お願い……?!」
 かつてそんな単語がエドワードの口から出た事など皆無である。
「ななな何かねッ?!私に出来ることなら勿論何でも!!」
 脳内では既に『お・ね・が・い(はぁと)』という口調に変換されている。鼻血噴出寸前のロイに向かって、エドワードは実に可愛らしく、にっこりと笑った。
「ホント?」
「本当だとも!!」
「良かった。じゃあ、デートして?」
「デ……ッ?!」
 ますます聞きなれない単語に、ロイの思考回路が完全に停止する。
 デートってデートって。

 浜辺やお花畑で「つかまえてごらんなさぁーい」「アハハ待てよこいつぅ」と追いかけっこをしたり。
 遊園地で一緒にメリーゴーランドに乗って、ウフフアハハと笑いあったり。
 夜景の綺麗なスポットでそっと肩を抱き寄せて「綺麗……」「いや、君の方が綺麗だよ……」などと言い合ったり。
 いやいやそれともそれとも(以下略)。

「……我が人生に悔い無ぁーしッッ!!」
 しばらく黙り込んだかと思ったらいきなりガッツポーズで叫ぶロイに動じた様子も無く、エドワードは冷静にティーカップを口元に運ぶ。
「苦節、四年と一ヶ月と三日!ようやく私の気持ちを受け入れてくれるのかい鋼の?!」
「まー、ソレは置いといて」
 抱きつこうとしてくるロイを容赦の無いアイアンクローで制して、エドワードは片手で手帳をめくる。
「えっと、明後日って空いてる?大佐、確か休みだろ?」
「空いてるとも!というか例え空いてなくても空ける!!」
 喜色満面で、見えない尻尾をぶんぶん振りながら応じるロイに、エドワードは満足げに笑った。
「そっか。じゃあ、十時にワンダーランドの前で待ち合わせな。ハクロ将軍には伝えとくから」
「分かっ……え?」
「ん?」
「は、鋼の……その、今、何と……?」
「ハクロ将軍。知ってんだろ?ニューオプティンの」
「いや知っているが……何故そこでハクロ将軍の名前が」
「決まってんじゃん。そんなの」
 そう言って、エドワードは、にっこりととどめをさすかのような鮮やかな笑みを浮かべた。
「ハクロ将軍と大佐のデートなんだからさ」
「……………はい?」
「オレ、誰と、何て一言も言ってないよ?」
「ちょ、ちょっと待った鋼の、どういう」
 天国から地獄に突き落とされたロイは、顔面蒼白になりながらもエドワードに必死で問いかける。
「んー、まあ、事情を説明すると、だな」
 『ルビアの書』という稀少文献を偶然入手したハクロが、それを餌にエドワードに取引を持ちかけたらしい。
 曰く、「マスタング君とデータがしたいんだ!」と。
 確かに、今までハクロと会う度に妙な雰囲気を感じないではなかったが(実際、そういった趣味の上官にロイは大好評だ)、愛妻家で子煩悩と評判のハクロのイメージとは合わず、今まで警戒した事など無かったのだが。
「もちろん、約束はデートだけだし、場所は遊園地内に限定。夕方には終了。妙な真似はしないって確約も取ってる」
「確約も取ってるって、鋼の、君ねえ……」
 文献欲しさに売り飛ばされたロイは、いっそ泣きたい、と溜息をついた。
「もちろん、タダとは言わねぇよ?等価交換が原則だからな」
 その言葉に、ロイの肩がピクリと動く。
「大佐がハクロ将軍とのデートをOKしてくれたら、オレが一日大佐とデートしてやる」
「………本当に?」
「男に二言は無い!」
「そんな事言って、また騙すんじゃないだろうな」
「騙さねーよ。誓約書書いてやってもいい」
 流石に疑り深くなっているロイは、エドワードをじっと上目遣いで見据える。
「明後日のデートはオレもこっそりついてく。ハクロ将軍は妙な真似はしないって言ってたけど、何があっても全力でアンタの事を守ってやるから」
 真っ直ぐにロイを見返す、琥珀色の瞳。
「……君が、私を?」
 どきどきと落ち着かない鼓動を持て余しながら、ロイは問い返す。
「ああ」
 力強く頷くエドワードに、内心で「うわーうわー、どうしよう鋼のがかっこいいー」とときめきながら。
「なら……デートしても、いい」
 ロイ・マスタング、陥落。



えー、この後は、エドが陰からこっそり、マスタング組と共に大佐の貞操を守ったりとか、はたまたデェト中の写真を撮影しまくって後日ハクロ将軍に高値で売りつけたりとかするわけですが、その過程で何となく大佐もハクロ将軍に絆されたりとかして、最初の警戒心がちょっと薄れたりとかしてですね。
で、それに感づいた豆が色々面白くなくってヤキモチ妬いたりとかする話でした。うん。
posted by 観済寺凪之介 at 00:27| 小話