2008年08月21日

天国に連れていって

甘党大佐設定な小ネタです。

「ティラミスという名前の意味を知っているかな。鋼の」

 食事の後は自宅でデザートだ、言って、まんまとエドワードを自宅に連れ込んだ男が、そんな事を言って、にっこりと胡散臭い笑みを浮かべる。
 本日のデザートは、特別に持ち帰り用に作って貰ったというティラミスだ。
 陶器の器に入ったそれは、滑らかな乳白色のクリームと、濃いめのエスプレッソのシロップを染み込ませたフィンガービスケットの層になっている。
 スプーンで掬って皿に盛られた上からかけたのは、ココアではなく、チョコレートを特別な製法で粉にしたもので、ココアよりも口どけが良いのだとロイが嬉々として解説してくれた。
 確かに、エドワードの知っているティラミスよりも段違いに美味い。
 ―…美味いのだが。
「―…知らねえ、けど」
 返答に少し間があったのは、今までの経験から、ロイがろくでもない事を言おうとしているのを何となく察したからだ。
「そうだろうな。アメストリスの言葉ではないからね。直訳すると『私を上に引っ張りあげろ』となる。―…『天国に連れて行って』という曖昧な訳し方をする事もあるようだが」
 いや、ある意味で直球か、とロイはニヤリと笑う。
「……で?」
「うん?」
「どういう意味なんだよ。結局」
 アンタの事だからどうせろくでもない意味なんだろうけど、と付け加えると、酷いなあ、と大して傷付いた様子もなくロイは愉しげに笑う。
「……ティラミスの意味はね、鋼の」
 低く艶のある声が、耳元で響く。
「直訳すると、”私を上に引っ張りあげろ”……つまり、快楽の絶頂へ連れて行って、という事だよ」
 耳朶を震わせるような低い声を紡いだその唇が、偶然か故意にかエドワードの耳に微かに触れた。
 ぞくりと体中を走り抜けた感覚に、エドワードを一瞬身を竦ませて―…やがて、呆れたようなため息を一つ。

 げし。

「……痛いじゃないか。鋼の」
 容赦なく脳天に落とされた鋼の拳に、ロイはわざとらしく眉を下げて情けない顔をしてみせる。
「まだ食ってる時から変な事言うからだ。アホ」
 そう言って、エドワードはまた一口、ティラミスを口に含む。甘くとろける食感は、確かに天上の美味。
「……風呂」
「え」
 突然出てきた単語に、ロイが弾かれたように顔を上げる。
「今日泊まってくから、風呂の用意しろって言ってんの。……何だよ、その顔」
「いや、だって、君……」
「迷惑なら帰るけど」
「まさか!」
 ロイは飛び上がるようにして浴室の方向へと駆け出し、ほどなくして聞こえてきた慌てたようなざぶざぶという水音に、エドワードはこっそりと笑った。
(大概、オレも甘いよな)
 そんな事を思いながら。



ちなみにティラミスの意味はホントです。例によって友達に送ったら「ティラミスでここまで妄想するとは流石は妄想キング」と言われましたが、そんなのアナタはいつだって私の予測を超えすぎ妄想皇帝様に言われたくないです。
でも「ティラミスは実はえろい」→「えろいはロイエド」→「ティラミスなロイエド」という思考パターンって、ごくごく普通な気がするんですけどねえ。

……普通ですよね?
posted by 観済寺凪之介 at 14:12| 小話