2009年09月02日

唐突にエド子。

※エド子注意※
今まで書いてたシリーズとは全く別の単発モノです。





「大佐さー、オレとえっちしない?」

 頼みがあるんだけど、という前置きの後で告げられたとんでもない台詞に、ロイは口にしていたお茶を盛大に噴き出した。
「うわ、何だよ大佐。汚ないなー」
「……済まない。何だか妙な聞き間違いをしてしまったようなんだが。君と、その……何だって?」
 聞き間違いであって欲しい、と願いながら、ロイはエドワードに恐る恐る尋ね返す。
「だから、オレとえっちしない? って。初めてだから多分下手だし、つまんないかもしれないけど。ダメ?」
 そう言って首を傾げる仕草は文句なしに可愛いが、あまりにも唐突で尚且つ非常識な台詞に、ロイは思わず頭痛を覚えて頭を抱え込む。
 ロイとエドワードが出会ったのは、彼女がまだ十一歳の時だ。十二歳で国家錬金術師となった時に、後見人として、保護者として見守ってきたが、この類の発言をエドワードから聞いたのは初めてだ。
 そろそろ十六歳になるとは言え、まだまだロイにとっては幼い子供にしか見えない。見た目も中身もどうにも情緒未発達と言うか、色気に欠けると言うか―…むしろ、彼女がいつまでも子供のようでいる事を、残念だと思う一方で、どこか安堵していてもいたのに。
「……理由を聞いてもいいか?」
 育て方を間違っただろうか、と思いながらも取り合えず尋ねると、エドワードは用意されたケーキを頬張りながら応じる。
「んー、ほら、この前中央行ったろ? 司令部で将軍の息子の何とかって奴にいきなり好きだとか付き合ってくれとか結婚してくれとか言われてさ。断ったんだけどしつこくて、そのうちに物置に連れ込まれそうになって」
「……その将軍の息子とやらの名前と所属を言いたまえ」
「何で発火布用意してんだよ。もうオレが散々ボコってきたから勘弁してやれよ」
「そういう問題ではないだろう! 大体、君は年頃の女の子なんだぞ?! もう少し自分の魅力を自覚して警戒したまえ! 一人で行動するなどもってのほか! アルフォンスと常に行動を共にしなさい!!」
「うん、まあ、あれ以来気をつけてはいるんだけどさ、やっぱりオレも女だし、不意を突かれれば、男の力には敵わない事もあると思うんだよな。だからさ」
 そんな事が二度とあってたまるか、と思いながらも、ロイはエドワードの言葉の続きを待つ。
「そんな事になる前に、せめて好きな人と経験しとけば、まだ諦めがつくかなーって思って」
「は……?」
 思いがけない言葉に、ロイは思わずぽかんとする。
「好きな、人……?」
「うん。好きな人」
 自分を指しながら尋ねるロイに、エドワードは事も無げに応じる。
「………初耳なんだが」
「うん。初めて言うし」
 エドワードの言葉にロイはしばし半眼でエドワードを見やり――…やがて、深い深いため息をついた。
「―…条件がある」
「条件?」
「君、もうすぐ誕生日が来て十六になるな。―…私と結婚したまえ。それが条件だ」
 厳かに告げられた台詞に、エドワードはぱちぱちと瞬きをする。
「結婚って……大佐、人生の一大事をそんな簡単に決めていいのか? 勢いで結婚とかすると後悔するぞ?」
 どうにもポイントのずれた心配をするエドワードに、ロイは机を両手で叩いて立ち上がる。
「熟考の結果だ! 大体、私が一体何年前から君に片思いをしていたと思う?! まだ子供だからとか、まだ目的を果たしていないからとか、そう思って自重していたところに! 他の男に性的暴行を加えかけられたなんて聞かされてみろ! 君は私の胃に穴を空ける気か!」
「え…えっと、好きって言ってくれるのは嬉しいけど、結婚ってのは飛ばしすぎなんじゃ……別に今時、えっちするぐらいで深く考えなくても、」
「馬鹿を言うな。婚前交渉などもってのほかだ、はしたない。君が私をどう思っていたのかは知らないが、これでも身持ちは堅い方なんだ。君に惚れたのを自覚して以来、誰ともそんな事はしていない」
 きっぱりとそう言い切り、どうだ参ったか、とばかりにロイは胸を張る。
「言っておくが、君の気持ちを聞いてしまった以上、私には結婚を譲る気など一欠片も無いぞ。私を婿に貰うか、君が嫁に来るかの二択だ。他の選択肢は無いと思え」
 堂々と非常識な事を述べるロイに、エドワードも、なるほどそんなものか、と納得したように軽く頷いてみせる。
「じゃあ、大佐を婿に貰おっかな……?」
「了解した。では書類の準備は任せたまえ。式は1ヶ月以内には執り行うから、しばらくイーストシティに滞在するように。ああ、色々と準備があるからアルフォンスにも今から報告してきなさい。宿までハボックに送らせるから」


「アルー」
「あ、お帰り姉さん。用事済んだ?」
「うん。何かオレ、大佐と結婚する事になった」
「……………何で?」





どうもエド子の場合はエド子×ロイ的になります……。何でだろう。どっちもどっちで非常識な話(笑)
多分結婚後にようやくちゃんとエド子の情緒が開花して、結婚してる夫婦なのに手を繋ぐだけで恥ずかしがって大騒ぎになるようなバカップルになるのだと思います。

posted by 観済寺凪之介 at 23:37| 小話