2011年05月22日

恋する露出狂(←凄いタイトル)

ツイッターで発言していたネタです。
凄いタイトルですが別に露出しているわけではありません(笑)




「恋をしている人間は、皆露出狂なんだよ、鋼の」
 唐突にそんな事を語りだした大人に、読んでいた文献から顔を上げた金色の子供が胡乱気な視線を向ける。
 報告書をチェックしている間、それを読んでいていいと言ったのはロイなのに、何故それを邪魔しようとするのだろうか。しかも、何だか大いに馬鹿っぽい発言で。
「――…また馬鹿な事を言って、と思っているだろう。君」
 先回りしてそんな事を言われて、エドワードは呆れたような視線を向ける。
「分かってんなら、変な事言ってないで仕事しろって。中尉に怒られても知らないからな」
「君に言われなくても仕事はするし、時間までには仕上げるさ」
 そう応じて、物言いたげにじっと見つめてくるロイに、エドワードはとうとう諦めて文献を閉じる。
 何を主張したいのかは知らないが、これは聞いてやらなければおさまらないのだろう。付き合ってやる義理も無いのだが、ホークアイを筆頭とする部下達に被害が及んでも気の毒だ。
「……で、露出狂が何だって?」
 エドワードの問いかけに、ロイは我が意を得たりとばかりににっこりと微笑む。
「シンよりも東の国に、こんな意味の歌がある。人に知られまいと隠していたが、私の恋心が顔に出てしまっていたようだ。思い悩んでいるのかと人から尋ねられるまでに≠ニいう意味のね。しかしこうして口に出している時点

で、既に秘めた恋心ではなく、むしろそれを積極的にアピールしていると言える。秘めた恋をしていますよ、想う相手がいるのですよ、とね」
「………はあ」
 話の展開が読めず、エドワードは曖昧な声を上げる。何故こんな話になったのかはさっぱり分からないが、とりあえず話の続きを待つ。
「歌、というかむしろ詩のようなものかな。それを詠みあう場で発表したものらしいから、まあそもそも他人に披露する事を前提とした、恋の歌におけるお約束のようなものではあるんだろうが。しかし、それがもし意中の人の反応

が見たくて作ってみたというのなら分からなくもない。つまり、そんな歌を詠んでみて、相手の反応をうかがっているという事だな」
「あー…うん、まあ、そうかもな」
 色恋沙汰に疎いエドワードではあるが、その辺りの気持ちの機微が全く分からないというわけではない。もっとも、エドワードからしてみれば、何故そんなまどろっこしい事をするのか、と不思議に思うだけなのだが。好きなら好

きだと言ってしまった方が効率的ではないだろうか。
「相手に知られたら困るけれども、しかしやはり気持ちを伝えたいという欲求はある。しかしそれが出来ないから、わざと思わせぶりな事を言ってみたりもする。そして相手の反応を見て一喜一憂する。つまり、『自分を見て欲

しい』という欲求があるという点で、恋をしている人間は皆露出狂という事だ」
「――…物凄い論理の飛躍を感じる」
 詭弁だとか、そういう以前の問題だ。露出する箇所の違いで大違いだ。何故それを露出狂として一括りにされなければならないのだろうか。
 エドワードが呆れているのを悟ったのか、ロイは流石に苦笑めいた笑みを浮かべる。
「……まあ、自嘲という事だよ。告白する勇気も無いくせに、相手に自分の気持ちを知って欲しいという気持ちだけはあるんだ」
 ロイのその言葉に、エドワードは一瞬ぽかんとする。――…それは、つまり。
「………それって、大佐が片想いしてるって事か?」
「――…まあ、そういう事だな」
 苦笑しながら頷いたロイに、エドワードは思わずまじまじとロイを見返す。女ったらしで有名なこの男が片想いなどと可愛らしい事を言い出したのが意外で仕方がなかった。
 似合わない、というよりも分からない。特定の相手のいる女性ならともかく、(見てくれだけなら)この男に口説かれて嫌な気分になるような女性は滅多にいないだろうに。
「告白する勇気が無いのか?」
 エドワードの問いかけに、ロイは一瞬意外そうに目を瞠る。エドワードからこんな事を言いだしたのが意外だったのだろう。
「――…勇気は無いな。怖いから」
「怖い? 何でだよ」
「相手との関係が変わってしまうのが怖い。――…好きだと言ったら、気味悪がられるような気がする。最悪、軽蔑されて縁を切られるかもしれない」
 妙な言い回しに、エドワードはますます首を傾げる。ただ告白しただけで、そんな反応が返ってくるような事態に何故なるのだろうか。
 相手にその気が無かったとしても「ごめんなさい」の一言で済む事だ。何故そんな事になるのかが分からない。
「――…良く分かんねえけどさ」
 エドワードは首を傾げながら立ち上がり、ロイの方に向き直る。
「大佐の好きな相手って、本気で好きだって言ってる相手を、気味悪がったり軽蔑したりするような奴なのか?」
 エドワードの問いかけに、ロイは呆気にとられたように、まじまじとエドワードを見返す。
「……何だよ。オレ、そんなに変な事言ったか?」
「あ……いや。――…少し、意外で……そうか、そうだな……」
 何故か少し頬を赤らめて口元を抑えて俯くロイに、エドワードは怪訝そうな顔をしながら立ち上がる。
「無駄話はこれで終わりな。オレは本読みたいから、どっか別なとこで読んでくる。大佐は真面目に仕事しろよ」
 出来れば持ち帰って宿でゆっくり読みたいところだが、無理を言って中央から借り出してきて貰ったもので、司令部からは持ち出し禁止と言われてしまったのだから仕方が無い。司令部の中なら読書が出来そうな場所は幾

つかあるから、そこで読んでから返却すれば問題は無いだろう。
「あ、鋼の!」
 慌てたようなロイの声に、エドワードは足を止めて振り返る。
「何だよ?」
「――…今夜、時間を作ってくれないか?」
「は?」
「夕飯を、一緒に」
 妙に真剣な声音に、エドワードは首を傾げる。
「まあ、おごりだったらいいけど」
 エドワードの返答に、ロイの表情が一気に明るくなる。
「では、定時後に。私はこの書類を片付けるから、後で来てくれ」
 そう言うなり机に座ってせっせと仕事をこなしはじめたロイに、エドワードは首を傾げながら執務室を出る。
 ロイがおかしいのはいつもの事だが、今日は輪をかけておかしい。片想いだとか露出狂だとか、一体何を言いたかったのだろうか。
(……ま、いっか)
 精々高いものでも奢らせてやろうと決めて、エドワードはとりあえず中庭に向かう。静かな木陰なら読書もきっとはかどるだろう。
 呑気にそんな事を考えていたエドワードが、ロイの積年の想いを打ち明けられ、怒りでも軽蔑でもなく、恥ずかしさにのたうちまわる事となるのは、この数時間後の事であった――…


そんなわけで露出してない露出ネタでした。
posted by 観済寺凪之介 at 21:37| 小話