2011年11月10日

静電気

静電気

※ちびエドです。
※原作設定なのか現代パラレルなのか判然としませんがその辺はお好みで補完願います。





「静電気がパチパチして痛い」

 唐突な苦情に、ロイは読んでいた書類から目を離し、隣に座る金色の子供に視線を向ける。
 家に持ち帰ってきた仕事の書類を読んでいたロイを真似るように、わざわざ隣に来て絵本を読んでいたエドワードが、少しばかり不満げに口を尖らせてロイを見つめている。
「ああ、冬だからな。空気が乾燥しているんだろう」
 そんなロイの答えに、エドワードはますます不満そうに口を尖らせる。
「ロイがオレに触る度に痛い」
「……それは済まない」
 ロイは意識していなかったが、すぐ隣に座っているせいで、時々微妙に触れてしまっていたのだろう。こういう微妙な距離だと、確かに静電気が起きやすくなっても無理はない。
 それが嫌なら、ソファではなく、近くでストーブが焚かれているラグの上にでも行けばいいのに、何故かこの子供はロイのすぐ近くに居たがるのだ。
「だからパチパチしないように、ロイはオレの事ずっと抱っこしてればいいと思う」
「え。……え?」
 堂々とした主張に、ロイは戸惑う。一体、何をどうしたら、そんな解決策が出てくるのだろう。静電気が痛くて嫌だというのなら、傍に居ずに離れていればいいのに。
「早く抱っこしろ」
 ねだるように両腕を伸ばされて、ロイは諦めて書類を脇に置き、腕を伸ばしてエドワードを抱きあげる。
「……仰せのままに」
 膝の上に乗せてやると、温かな重みが心地良い。そういえば最近は仕事が忙しくて、こんなスキンシップも取ってやれないでいたな、とロイは心中で密かに反省する。
 エドワードは上機嫌で、最近覚えたらしい何かの歌を歌っている。しかし、歌詞は相当うろ覚えらしく、何を言っているのかはさっぱり分からない。
 しかし、エドワードの機嫌が回復したのならば何よりだ。タイミングを見計らって、脇に避けておいた書類を手に取り、エドワードを抱えながら読み始める。
 すると、今度はエドワードがその小さな手を伸ばして、仕事の時だけ掛けているロイの眼鏡に触れてくる。
「ロイ、何で眼鏡かけてんの?」
「仕事をしているからだよ。こら、やめなさい」
 エドワードはロイの反応を面白がるようにロイの眼鏡を取り上げ、自分でかけてしまう。
「わー、何これ、変なのー」
「こら、やめなさい! 目が悪くなったらどうする!」
 慌てて取り上げると、エドワードは不満げに頬を膨らませて反論してくる。
「目が悪くなるほど仕事してるの、ロイの方だろ」
「…………………」
 意外なところから来た反論に、ロイは何となく返す言葉を失う。眼鏡をかける事など、仕事の時以外には無いし、普段の生活は裸眼でも困らない程度なのだけど。
 ……多分、エドワードが言いたいのは、そういう事ではないのだろう。
 何となく黙りこんでいると、小さな手が再びロイの顔に伸びてきて、ロイの額の辺りを撫でてくれる。
「眉間にシワ出来てる」
「……そうか。ありがとう」
 思わず笑うと、エドワードが嬉しそうに声を上げた。
「あ、直った。シワ無くなった!」
「そうだな」
 もう仕事の書類を読む事は諦めて、ロイは膝に乗せていたエドワードを抱き抱え直す。
「なあ、ロイ。一緒に風呂入ろ」
「一緒に? もう五歳になったから、一人で入ると言っていなかったか?」
 先日迎えたばかりの誕生日の日にそう宣言されて、ロイはエドワードの成長が喜ばしくもあり、寂しくもあり、少しばかり複雑な気分だったのだ。それが一体、どういう風の吹きまわしなのだろうか。
「違う。オレが、ロイの為に、一緒に風呂入ってやるって言ってんの! 一緒に風呂入って、一緒に遊んで、そんで、あったまったら一緒に寝よう」
 な? と可愛らしく小首を傾げてねだられては、断る事など出来る筈も無い。ロイは苦笑して、エドワードを抱えたまま立ち上がった。
「……そうだな。じゃあ、今日は一緒にお風呂に入って貰おうかな」
「今日だけだからな。トクベツなんだからな!」
「はいはい。ありがとう」
「もっと感謝しろ」
「ありがたき幸せ。……ああ、お風呂に持ってきていいおもちゃは、二つまでだぞ」
「ケチ」
 そう釘を刺すロイに、エドワードはぷう、とふくれてみせる。
 その頬を指先でつついて、幸せな気分で、ロイは笑った。

 
終わり


ツイッターで呟いたネタの増量版です。
posted by 観済寺凪之介 at 22:52| 小話